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柳の木の下でブランコを漕ぐ

俳優窪田正孝さんを楽しむ私の隠れ家

ファンタジーと現実が溶け合う奇跡:資生堂スノービューティー2016『逆さに降る雪』を鑑賞する

CM

資生堂の薬用美白フェースパウダー「スノービューティーⅢ」のショートムービー『逆さに降る雪』に窪田正孝さんが起用されました。

商品の宣伝とは思えない一本の長編映画のような素敵な作品です。監督は柳沢翔さん。どの場面も美しく、登場する二人が作品の持つ雰囲気に見事にマッチしています。

 


スノービューティー2016 『逆さに降る雪』|資生堂

本作の舞台は、一面真っ白な雪景色の中、ぽつんとたたずむ小さな駅の待合所。そこには、大雪の影響で来ない電車を待ちくたびれた客のユキ(二階堂ふみさん)と、駅員のシロー(窪田正孝さん)の二人しかいないという閉ざされた世界の中で起こる、ファンタジーあふれるラブストーリーです。
 「いつかは幸せになりたい」と願う女性に向けて、ラブストーリーだけでなく、傷ついた主人公の心を癒やし、再び現実社会に立ち向かう勇気を与えるというストーリーに仕上がっています。

 

主題歌は、斉藤和義さんが本作のために書き下ろした「ひまわりに積もる雪」。ユキを想うシローの一途な気持ちが切なくそして力強い想いで書かれています。タイトル、そして歌中の”ひまわりに積もる雪”という言葉の”ひまわり”は、シローにとってユキとして、太陽に向かって真っ直ぐな”ひまわり”はユキの向かうべき道として、”積もる雪”という言葉は、ユキにふりかかるいくつかの試練や悩みとして表現されています。*1

 

この作品の窪田くんは本当に素敵です。彼の魅力のひとつは声だと思うのですが、「傷ついた主人公の心を癒やし、再び現実社会に立ち向かう勇気を与える」というこの役割にぴったりの優しい声をしています。「あなたなら 大丈夫」を何度リピートしたことか。

俳優の斎藤工さんが窪田くんについて以前「窪田くんはジブリに出てくる青年のような雰囲気がある。もちろんそこに存在してるんだけど、どこか幻想的な部分を持っている」*2 と表現していますが、まさにその部分の魅力が映像化された作品になっています。

 

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 『逆さに降る雪』は幻想の世界と現実世界とが独立した世界として描かれるのではなく、二つが溶け合い、補完し合うバランスがとても魅力的だ。夢から覚めた後にもプレゼントされたコンパクトが存在したり、ラストではシローと瓜二つの青年が現れるなど、スノードームのなかで起こる出来事は現実世界に作用する。何よりもシローが与えたもの、「あなたななら 大丈夫」という言葉によってユキの表情は変化し、現実世界で一歩前に踏み出す勇気を得る。

試練や悩みとしての雪

この物語のなかで「雪」は「ユキに降りかかるいくつかの試練や悩み」として表現される。スノードームの世界に迷い込んだユキは電車に乗るべきだということはわかっているのに乗ることができない。電車が「雪」のせいで動かなくなっているからだ。ユキは自分が抱える試練の大きさから前に進むことができなくなっている。開かれたノートは白紙のままだ。シローがスノードームの世界を反転させることで、雪は逆さに降り始め、ユキの試練や悩みが徐々に軽くなっていく。現実に戻り、ユキは真っ白い紙にやっと一本の線を描くことができる。それは雪が積もる真っ白い大地に電車が走っていく軌跡とも重なる。

ファンタジーと現実を結ぶ電車

ユキが待つ電車は幻想の世界と現実世界とをリンクする乗り物として描かれる。黄色く塗られた夏の窓を眺めながらつかの間現実を思い出す場面では、スノードームの中の電車の映像と同時に電車の走る(ような)音が挿入されるし、「ここってもしかして……」とスノードームの世界のなかに自分がいることを確信させるのも電車が浮遊する姿だ。スノードームが割れてユキが目覚めるとき、再び電車の走る(ような)音が聞こえてくるが、そのときになって初めてその音が窓の外の工事現場から聞こえてくる重機の音なのだと気づかされる。

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現実世界と幻想の世界、夏と冬、床と天井、空から降る雪と逆さに降る雪、シローがぶちまけてしまったペンキをユキがごまかす関係とユキが割ってしまったスノードームをシロー(似の青年?)が修理する関係など、この作品のなかには対になるようなさまざまな関係が散りばめられているが、そのひとつに電車とその乗客を迎える駅員と見送る駅員の姿がある。

迎えるシローと見送るシロー

駅員の仕事は電車を迎え、見送ること。乗客を適切な電車に乗せ、向かうべき道へ導くこと。

スノードームのなかの駅員(フィギュア)はこの作品のなかで二つの姿勢をとる。ひとつは、左手を挙げて電車に向かって敬礼する、電車を迎える駅員の姿。この姿は、ユキが黄色く塗られた夏の窓を見つめながら現実を思い出す際に挿入されるスノードームの映像(図4)から、そしてラストの修復された後のスノードームの様子から確認することができる(図5)。

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もうひとつはスノードームが割れてしまったときの駅員の姿だ。駅員は右手を高く挙げ電車とその乗客を見送る姿勢をとっている(図6)。

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目覚めてから「もう一度お願いします」と言って電話で仕事の話をする場面、ユキが手にしているのはユキを見送る姿のシローだ。この場面でもシローはささやかだがユキに勇気を与えてくれている(図7)。

 

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二つの疑問

(ロジカルに考えるべきものではないのかもしれないですが、どなたかいいアイディアをお持ちでしたら教えてください。)

  • スノードームが転がって机から落ちていく場面、駅員の姿が消えているように見える? 見えますよね? どう考えたらいいのだろう。

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  • 二人が屋上でダンスをするとき、転がるスノードームの中の様子を写したカット(図9)。この電車と建物の配置はラストショットのスノードームの配置(自分なりに図を書いてみたりした)から考えるとありえない構図だと思うのだけど、どういうことだろう?(私がうまく空間把握ができていないだけかもしれません。) 電車は動いているとか?

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*1:株式会社資生堂のプレスリリースより(2016年7月7日 10時00分)。ショートムービーの概要やあらすじ、二階堂さん、窪田くん、斉藤和義さん、柳沢翔監督へのインタビューが下のサイトで公開されています。

*2:2016年2月6日(土)に放送された『斎藤工のTAKUMIZM』の窪田正孝さん関連部分の書き起こしから引用。詳細は以下の過去記事をご覧ください。 

*3:©資生堂『逆さに降る雪』より引用

*4:©資生堂『逆さに降る雪』より引用

*5:©資生堂『逆さに降る雪』より引用

*6:©資生堂『逆さに降る雪』より引用

*7:©資生堂『逆さに降る雪』より引用

*8:©資生堂『逆さに降る雪』より引用

*9:©資生堂『逆さに降る雪』より引用