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柳の木の下でブランコを漕ぐ

俳優窪田正孝さんを楽しむ私の隠れ家

『東京喰種トーキョーグール』1巻を読んだ③

少し前に『東京喰種』の原作は『東京喰種:re』も含めて刊行されているものはすべて読んでしまったんですが、相変わらずこのペースで1巻に戻ります。

それにしても読めば読むほどカネキ役は窪田くんにぴったりですね。もはや窪田くんにしか見えない。それでいて物語はハッピーには進まないので気持ちとしては複雑なのですが。

後半は魅力的な登場人物がどんどん登場し、アクションやバトルシーンのオンパレードで正直まだ何が起こったのか物語の整理が追いついていません(映画ではバトルシーンはどうやって描くんだろうか……)。映画公開まで時間があるので、ゆっくり原作を振り返りつつ楽しみたいと思います。

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ヒデ「カネキなんかあっという間に喰われるだろーな」

カネキ「僕が "喰種" ならヒデはとっくに死んでると思うよ」

まだカネキが半喰種になっていないときの喫茶店「あんていく」での会話。実際にはこのふたりの予想は覆されることになる。ただしとても悲しいかたちで。『東京喰種:re』最新刊まで読んでから1巻に戻ってみると、このやりとりはとても切ない。

 

揺らぐ "喰種" と "人間" の境界

『東京喰種』には "人間" と "喰種" のふたつの人種(?)が登場する。その描き分けでまず気づくのは吹き出しの色だろう。人間の言葉は黒い文字で、喰種の言葉は白抜きで描かれる。例えば、その区別がもっともはっきり現れている1コマがカネキが自らの境遇に絶望し移植された臓器を取り出そうとする場面だ。

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見開き2ページにわたって描かれるこのコマは鬼気迫るものがある。ここでは「人間に戻ろうとする "人間" としてのカネキ」(黒文字)と「それを許さない "喰種" としてのカネキ」(白抜き)との闘いが視覚的にも分かる形で表現される。「ド」が黒文字で「ん」が白抜きという順番にも納得できるし、カタカナとひらがなの混在も異質なもののぶつかり合いを強調している。  

ただ、喰種が発する言葉がすべて白抜きになるかというとそうではない。喰種たちが普段は人間に紛れて生活しているように、彼らが発する言葉も普段は人間と変わらない形で表現され、人間の世界に紛れ込む。もちろん喰種の言葉が最初から白抜きで出てきたなら誰が喰種であるかがすぐに読者にわかってしまう、それは避けなければいけない、というような配慮もあるのだろう。けれど、どのような理由にせよ、喰種たちが常に白抜き文字で言葉を発しないことは、"人間" か "喰種" かという区別が一見すると個体(キャラクター)ごとに決まっているように見えて、実はその境界がすでに揺れていることを暗示している。実際、作品が進むにつれて "人間" か "喰種"かの境界は曖昧になり、『東京喰種: re』に入るとその境界はよりいっそう不確かなものになっていく。

漫画では吹き出しで描き分けを行っているが、同じ部分をアニメでは薄い赤いもやのようなものを描くことで演出していた。映画ではどのように描かれるだろうか。個人的には、赤くなった "喰種" の目に世界はどのように映っているのだろう、という点が気になっている。

 

ヒトではない自分、ヒトからは理解されない自分に気づくとき

ナイフで自分の体を刺した後、カネキはその思いが叶わないとわかって絶望する。このまま生きていくためにはいつかヒトを食べなければいけない、それをしてしまったら自分はもうヒトではないかもしれない。この場面には胸が締めつけられる。

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私はそんなに漫画に詳しくないのだけれど、この場面を読んだとき、ある別の漫画の1コマが頭に浮かんだ。古谷実*3ヒメアノ〜ル』6巻の見開き2ページに渡る1コマだ。

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このシーンは、森田という主人公の幼馴染が自分が人間を殺すことに快楽を感じていることに気づいて絶望する場面。そうなりたくてなったわけではない、けれど自分は絶対に社会からは受け入れられない異常性を抱えて生まれてきてしまった。そんな森田の悲しみや孤独が、この全身で泣いているシーンからは(穏やかな山の風景との対比もあって)痛いほど伝わってくる。自分の意思とは関係なく半喰種になってしまったカネキの絶望とも重なる。

 

カネキとヒデ

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(カネキを窪田くんが演じることになったからこそ感じるのだけど、)このヒデとカネキの1コマは、私はどうしても『ケータイ捜査官7』のケイタとタツローの関係を思い起こさずにはいられない。

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虫、鳥、卵から生まれるものたち

1巻の最後で店長がカネキに言葉をかける場面。この場面でトーカが蝶に向かって手を伸ばし、蝶が指にとまる場面が描かれる。

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ここでも表現されているように、喰種は赫子(かぐね)の見た目からしてもどこか虫の化身のような特徴を持っている。喰種捜査官たちが喰種たちから「白鳩」と呼ばれているのも、虫を捕食する鳥というイメージと結びつきやすい。

ただ、2巻に入ると喰種の側に「梟」が出てくるのでよくわからなくなる。あと、虫も鳥も卵から生まれることは共通しているな、などと思ったり。

つぎは2巻へ。

yanabura.hatenablog.jp

*1:石田スイ『東京喰種トーキョーグール』1巻(デジタル版, 位置No. 95-96/225)東京:集英社より引用

*2:石田スイ『東京喰種トーキョーグール』1巻(デジタル版, 位置No. 98/225)東京:集英社より引用

*3:このブログで書く機会はないと思いますが、私は古谷実さんの漫画の大ファンです。ギャグ要素を使ってあらゆる突拍子もない可能性に果敢に挑んでいる方として心から尊敬しています。『ゲラクシス』もこれからの展開が楽しみ。

*4:古谷実ヒメアノ〜ル』6巻(デジタル版, 位置No. 180-181/187)東京:講談社より引用

*5:石田スイ『東京喰種トーキョーグール』1巻(デジタル版, 位置No. 156/225)東京:集英社より引用

*6:©WiZ・Production I.G・バディ携帯プロジェクトLLP/テレビ東京ケータイ捜査官7』, DVD File 10, Episode 36「ともだち」より引用

*7:石田スイ『東京喰種トーキョーグール』1巻(デジタル版, 位置No. 218/225)東京:集英社より引用