柳の木の下でブランコを漕ぐ

俳優窪田正孝さんを楽しむ私の隠れ家

見るべきなんだ みんな 映画『東京喰種トーキョーグール』を

 

※ 以下の記述には映画の細部について言及しているところがあるので、内容について知りたくない方はご注意ください。

 

f:id:yanabura:20170819203003j:plain

 

公開からかなり経ってしまったが、映画『東京喰種トーキョーグール』の感想をまとめていこうと思う。

総評

実写映画『東京喰種トーキョーグール』は主人公カネキの成長譚として原作漫画(1〜3巻)を2時間に過不足なく再構成し、原作を読んだときの読後感を巧みに再現した素晴らしい作品だった。

原作を初めて読んだときに私が魅力を感じたのは、人間と喰種の両方に共感できるように物語が進むところ(どちらも正しくどちらも悪く見せるところ)、主人公カネキが無知であることを自覚し「分からない」と言うところ、そしてさまざまな葛藤の末に「知るべきなんだ みんな」という考えに至るところなのだが、今回の実写映画はまさにこれらのポイントを大切にしながらカネキの葛藤を通して喰種という異種(広く他者と捉えても良いかもしれない)と共生することへの模索を描いている。

物語の軸となるカネキの葛藤は極めて普遍的なものであるため、原作ファンであっても原作を読んでいない人にとってもそれぞれに楽しめる作品になっていたと思う。実際、原作を全く知らない母(俳優ファン・映画ファンというわけでもない)と見に行ったときにも、物語の主題を理解することに全く困難さを感じていなかったし、「原作を知らなくても十分面白かった。現代社会における重要な問題提起をしている。他のひとにも強く勧められる」と興奮気味に語っていたほどだ。

この作品を実写化した意義、そして映画作品としての成功を感じるのは、「原作ファン頼み」「俳優ファン頼み」と「◯◯頼み」になっていないこと、原作を大切にしたうえで映画作品としていかに良いものを作るかが徹底的に話し合われたのだろうと感じられる点だ。主題歌「BANKA」を歌ったIllionの野田洋次郎さんが「自分もこの映画のスタッフ、キャストの皆さんの熱量に追いつきたいと思った」と語り、蒼井優さんも「最初の現場から1ヶ月近く経っても現場のテンションが全く落ちていなかったのに驚いた」と語っているように、監督、演出、脚本、CGやVFX、音・音楽、芝居、小道具、衣装、そして作品の企画から宣伝に至る映画製作のあらゆるプロセスに「これまでにはない映画を作ろう」という意気込みが感じられ、それぞれの技がそれぞれの場所で光っていた。

映画化を応援してくれる原作者石田スイ先生の協力もかなり心強いものだった(作品を待っていた者にとっても)。石田先生は実写化が発表される際につぎのようにコメントをしているが、出来上がった作品を見て、私はこれが証明されているのではないか感じた。それぐらい正しいモノづくりの在り方を見たような印象を受ける。

どこかでも発言しましたが、実写化に関して、もちろん不安はあります。映画の製作側の方々が本当に根気良く、原作者である自分の意見を聞いてくださっていて、自身の不安は少しずつですが取り除かれました。ものをつくる環境としては、とても健全な場所だなと感じておりますし、本来そうあるべきだと思います。しかし、それによって映画が良くなるのかはわかりませんし、結局ダメになっちゃうかもしれません。ただ、個人的な望みを申し上げれば、「健全な環境でつくればちゃんと良いものが出来るんだ」ということを、監督の萩原健太郎さんに証明していただければいいな、と願っております*1

 

実写映画が抱える難しさのひとつにはキャスティングがあるが、役者のハマり具合も凄い。とにかくどの役者も声と動き(表情を含む)がよかった。実写映画ではビジュアルはもちろん大事だが、ただ似ていたところで声やしゃべり方、表情が合わないとキャラクターの感情は伝わってこないし、違和感を生んでしまう。が、今回のキャスティングではそのような違和感を感じたキャラクターはいなかった。それぞれの役者の声と表情が立体的にキャラクターの心情を表現してみせるので、人を喰う喰種が存在する世界がリアリティを持ってすんなりと受け入れることができた。細かい芝居についてはまた稿を改めたいと思うが、主人公カネキを演じた窪田正孝はもちろん、リゼを演じた蒼井優も素晴らしかったし、トーカ役の清水富美加、ニシキ役の白石隼也、ヒヨリ役の桜田ひよりは想像していた以上によかった!

実写映画が陥りがちな原作ファンに媚びたコスプレ感を感じさせなかった点も良い。カグネのビジュアルや動きもその世界のなかで必然性を持ってそのような姿をしていることが感じられたし、セリフとして言葉にせずとも登場人物たちの性格や背景などを想像させるような造形には説得力があった。

最後に、何よりもこの映画は見るたびに新しい発見を与えてくれる。回を重ねるごとに「自分は最初に何を見ていたのだろう」と考えさせられる。そんな映画体験は貴重だと思う。まだ観ていない方はもちろん、すでに観ている方もぜひ何度でも足を運んで欲しい。

 

とは言え、上記の総評ではあまり細かいことが論じられていないので、これから少しずつ細かい点についてまとめていきたい。